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ブログ

投稿日:2022.12.25

知覚過敏はなぜ起こる?矯正治療との関係性

こんにちは。歯科医師の髙田です。
今回は知覚過敏について歯の構造から詳しく解説します。
知覚過敏と矯正治療との関係についてもお話ししますので、ぜひ最後までご覧ください。
※過去の類似記事はこちらです。→「矯正をすると知覚過敏になるって本当?」

知覚過敏の症状

知覚過敏は、歯がしみて痛みを感じるけれど、すぐに落ち着くような一過性の症状のことです。
主に冷たい食べ物や飲み物がしみる傾向があります。
軽い症状の場合は、自然に痛みが治ることもあります。

虫歯と知覚過敏の違い

知覚過敏は、「虫歯ができたのかな?」と勘違いしやすいですが、虫歯と違って歯に穴が空いたり、変色したりしません。
痛みの感じ方も虫歯と知覚過敏では違いがあります。
知覚過敏は刺激が伝わったその時だけ一過性に痛みを感じますが、虫歯は強い鈍痛を持続して感じることがほとんどです。
また、虫歯が進行すると、ぬるま湯でも痛みを感じます。
知覚過敏はぬるま湯だと痛みが起きにくいため、痛みがある間はぬるま湯で歯磨きやうがいをしてもらうことがあります。

虫歯の特徴

  • ・歯の色が変色している(茶色や黒など)
  • ・穴があいている
  • ・持続してズキズキした鈍い痛みがある
  • ・冷たいものの他、温かいものや甘いものもしみる
  • ・噛んだときも痛みがある

知覚過敏の特徴

  • ・冷たいものを飲んだり食べたりした時だけ一時的にしみる(一過性の痛み)
  • ・歯ぐきの根本が露出していることがある(歯が伸びたように見える)
  • ・噛んでも痛みがない

歯の構造と知覚過敏のメカニズム

歯の構造のイラスト

知覚過敏の原因を理解しやすくするために、歯の構造について解説します。
歯の歯冠部はエナメル質、象牙質、歯髄(神経)の大きく分けて3つの構造になってます。
一番表層にエナメル質、2番目に象牙質、中央に歯髄という順番です。
歯根部はセメント質、象牙質、歯髄の3構造になっています。
それぞれの組織は内側の層に行くほど薄くなっています。

エナメル質

歯冠の表層にあるエナメル質は、厚さが2〜3ミリの人体の中では、最も硬い組織です。
エナメル質はその硬さで内部の象牙質や神経を様々な刺激から守っていますが、繊細な側面もあります。
過度な力でのブラッシングや、歯ぎしり、食いしばりなどですり減ったり傷がついたりしてしまいます。
また、プラークの中の細菌が排出する酸で、エナメル質のミネラル成分が溶け出てしまうことがあります。

象牙質

エナメル質、セメント質の内側には、象牙質と呼ばれる組織があります。
象牙質は、象牙細管という無数の小さな穴があり、冷水などの刺激を歯髄に伝達させるメカニズムになっています。

セメント質

歯ぐきの下にある歯根部には、エナメル質が無く、セメント質が象牙質の上層にあります。
セメント質は、骨と同じ組織ではありますが、エナメル質に比べて非常に薄く、柔らかい組織です。
セメント質は歯根膜で、歯を支える骨(歯槽骨)とつながっています。

歯髄

歯の一番中央にある歯髄には、象牙質に栄養を供給する血管とリンパ官、
痛みの知覚を感じる神経繊維などが通っています。

知覚過敏が起こる原因

手鏡で口元を見ている女性

象牙質には構造上、神経に繋がる穴(象牙細管)が無数に開いています。
象牙質が露出することで、冷たいものなどの刺激が神経に到達するため、痛みを感じ、過敏な反応をします。
エナメル質の破損などが原因で歯の象牙質が露出して知覚過敏になります。

また、歯ぐきが退縮すると、歯根部には象牙質の上にセメント質がありますが、
エナメル質に比べて薄くて柔らかいため、歯磨きや噛む力ですぐにすり減って、象牙質が露出してしまうことが多いです。
エナメル質やセメント質がダメージを受けて、象牙質が露出すると、
象牙細管が過敏になり、しみるような痛みを感じます。

圧が強すぎるブラッシング、食いしばりや歯ぎしりなどによる過度な咬合圧、加齢による歯肉の退縮、
歯周病などがエナメル質の破損や、歯ぐきの退縮に繋がり、象牙質の露出を起こしてしまいます。

✔︎知覚過敏が起こるリスク要因

1. 圧が強すぎるブラッシング

過度なブラッシング圧はエナメル質の摩耗や歯ぐきの退縮を起こします。

2. 食いしばりや歯ぎしり

食いしばりや歯ぎしりは過度な力が歯に加わることで、
歯の破折や咬耗(噛む面が削れること)、歯ぐきの退縮が起きることがあります。

3. 加齢による歯ぐきの退縮

歳を取ることで歯ぐきは少しずつ退縮を起こします。

4. 軽度の虫歯

白濁する程度の軽度な虫歯でも細菌が出す酸によって、エナメル質がもろくなることがあります。

5. 歯周病

歯周病が進行すると、歯周ポケットが形成されて、
歯ぐきの中の歯槽骨が吸収していくことで、歯ぐきが退縮します。

知覚過敏と矯正治療の関係

矯正治療をすると歯を動かす治療の影響で、歯ぐきが退縮することがあるため、
症例によって個人差もありますが、知覚過敏になることがあります。
しかし、歯並びの悪さから、一部の歯に過度な咬合力(噛む力)がかかるなどの噛み合わせのバランスが取れていない場合や、
歯の傾きや、重なりなどの凹凸が原因で、歯磨きが十分にできずに虫歯や歯周病が起こる場合もあるため、
矯正治療で起こる知覚過敏は一概に悪いとは言えません。

歯列矯正により、歯並びが改善されて歯磨きがしやすい歯並びになることや、
噛み合わせのバランスが整うことで、結果的にリスク要因を減らすことができます。
歯列不正がそのままの口腔内は、むしろ知覚過敏が起こりやすい状態なので、歯列矯正をして、
リスク要因を減らす方が良い場合の方が多いです。
また、矯正治療の中で歯ぐきの退縮はある程度予測ができるので、
知覚過敏をフォローしていくことができます。

知覚過敏の治療方法や対処法

歯の模型と歯科用治療器具

①治療方法

歯科医院で知覚過敏を抑える薬の塗布をすることや、歯科用のレジン(プラスチック)や、
ボンディングなどのコーティング剤でカバーする治療があります。

②対処法

知覚過敏に効果のある有効成分が配合された歯磨き粉を使うことも対処法の一つです。
(市販の物だとシュミテクトなど。)
歯の再石灰化を促すフッ素配合の洗口液を使うこともおすすめです。

また、冷水を避けて、ぬるま湯でうがいや歯磨きをするとしみにくくなります。
歯がしみている時には、歯ブラシを当てるのが痛い場合もありますが、歯垢が残ったままだと、
さらに知覚過敏の悪化を招くことがあるので、歯磨きがおろそかにならないように気をつけましょう。

※こちらの記事でも知覚過敏の有効成分や歯磨き粉について紹介していますので、合わせてお読みください。
「矯正をすると知覚過敏になるって本当?」

③予防方法

過度な力でブラッシングをしないことや、毎日の歯磨きで歯垢を取り除くことが知覚過敏の予防に繋がります。
硬い歯ブラシだと、力がかかったときに摩耗しやすいので、柔らかめの歯ブラシが良い場合もあります。
歯ブラシの持ち方も、力をかけすぎないペングリップ(鉛筆を持つような持ち方)で磨きましょう。
また、歯石が沈着すると、歯石の下の歯茎が歯肉炎や歯周病になりやすいため、定期的な歯石除去も大切です。
食いしばりや、歯ぎしりによる歯のすり減りが気になる場合は、寝る前にマウスピースを装着することも予防になります。

まとめ

今回は、知覚過敏について詳しくお伝えしました。
日々の歯磨きは、歯周病や虫歯予防のために大切ですが、過度なブラッシングにならないように注意するようにしましょう。
また、しみると感じるときには、感じ方に違いはありますが、虫歯が潜んでいることもあるので、
不安な時は歯科医院で検査をする方が良いです。

「矯正治療すると知覚過敏になるの?」という質問に対しては、
歯ぐきの退縮が起こる場合があるため、知覚過敏を起こす可能性があります。
しかし、そもそもが歯並びの悪さから虫歯や歯周病になりやすく、不適切な噛み合わせが、象牙質の露出を招きやすいため、
矯正治療で歯並びを整えることで知覚過敏のリスク要因を減らせることの方が、メリットがあると言えます。
矯正治療中に歯がしみると感じた場合は、お気軽にご相談ください。
>>無料カウンセリングのご予約はこちら。
最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

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